抗議文

2002年06月02日

在本邦アメリカ合衆国大使館
特命全権大使
 ハワード・H・ベーカー 閣下

長崎市長 伊藤 一長

 本日、貴国がプルトニウムを用いた核兵器の起爆装置の製造を再開するとの方針を明らかにした旨の情報に接しました。
 このことは、57年前、15万人もの長崎市民を殺傷した原子爆弾と同様の原爆を起爆装置とする水爆の核弾頭製造を再開しようとするものにほかならず、核兵器廃絶はもとより、1988年の中距離核戦力(INF)全廃条約発効以来、緩やかながらも進みつつあった核軍縮の流れに逆行する暴挙であり、貴国の単独行動主義も、ここに至っては怒り極まるものがあります。
 このことによって、貴国政府が本年1月、貴国議会に対し地下核爆発実験再開の可能性を通告し、新世代の小型核兵器開発に向けた準備までも意図しているとの報道の信憑性が増すとともに、先に米国とロシアとの間で結ばれた戦略攻撃兵器削減条約も、核戦力維持のための方策にすぎないとの私どもの疑念が、図らずも正しかったと言わざるを得ません。
 昨年9月11日に貴国で発生した同時多発テロ以降、貴国やイギリス等によるアフガニスタンでの軍事行動、イスラエルとパレスチナ暫定自治政府との紛争、そして今、インドとパキスタンとの間で、核兵器の使用さえ危惧される軍事的緊張が高まり、世界の人々はかつてなく核戦争の防止と、世界平和への思いを強くしていたところであります。
このような中にあって、核軍拡競争への扉を再び開き、平和への道を閉ざそうとするこのたびの貴国の行為は、一日も早い核実験禁止と核兵器廃絶を訴えつづけてきた長崎市民をはじめとする世界の人々の願いを無視し、長年にわたる国際社会の努力さえも無にしようとするものであり、断じて許すことはできません。
被爆地長崎の市民を代表し、ここに厳重に抗議します。
 貴国が、「核兵器は一般的に国際法に違反する」との国際司法裁判所の勧告的意見を想い起こし、このたびの方針を直ちに撤回するよう求めるとともに、包括的核実験禁止条約(CTBT)を早期に批准し、2000年5月のNPT再検討会議で採択された「核保有国による核兵器廃絶への明確な約束」を誠実に実行することによって、核兵器のない平和な21世紀の実現に向け、世界の大国としての責務を果たすよう強く求めます。
以上の内容について本国へ伝達されますようお願いいたします。