抗議文

2002年12月13日

アメリカ合衆国大統領
 ジョージ・W・ブッシュ 閣下

長崎市長 伊藤 一長

 12月10日、貴国が大量破壊兵器の使用に対して核兵器を含む圧倒的な軍事力で対抗することを明示した新たな「戦略報告」を公表した旨の報道に接しました。
 このことは、新たな大量破壊兵器の保有のみならず使用の危険さえはらんでいる国家の出現が懸念される中で、それらの国に対する対抗措置としての警告を意図したものと思われます。
 しかしながら、核兵器こそ、他のどのような兵器もとうてい及ばない大量無差別殺戮兵器であり、57年前わずか1発の原子爆弾によりおよそ15万人が死傷した長崎の市民としては、いかなる理由があろうとも核兵器の使用は断じて容認することはできません。
 1995年11月、国際司法裁判所において開かれた核兵器を巡る審理に際し、私は、原爆による惨禍を体験した都市の市長として、核兵器の使用は国際法に違反することを明言しました。翌年、同裁判所は、「核兵器による威嚇と使用は国際法に違反する」との勧告的意見を発表し、私どもの意見が正しかったことを証明するとともに、核兵器による威嚇や使用の不当性が国際社会の一致した見解であることを示しました。
また、2000年5月の核不拡散条約(NPT)再検討会議においては、「核保有国による核兵器廃絶への明確な約束」が合意され貴国をはじめとする核保有国の誠実な履行が求められています。このような経過の中にあって、核兵器の使用を鮮明に打出す近年の貴国の動向は、世界を滅亡へと導こうとする危険な行為にほかならず、心からの憤りを禁じ得ません。このたびの貴国の発表に対し、被爆地長崎の市民を代表し、ここに厳重に抗議します。
 貴国は、唯一の超大国として平和的解決に向けて最大限の努力を払う責務があります。このたびの「戦略報告」を直ちに撤回するとともに、核兵器のない平和な21世紀の実現に向け国際社会に対する指導的役割を果たすようここに強く求めます。