要請文

2011年12月02日

駐日アメリカ合衆国大使館
特命全権大使
ジョン・V・ルース大使 閣下

長崎市長 田上 富久

 今年7月、貴国政府が原子爆弾を開発した「マンハッタン計画」を記念する公園の建設を計画しているとの報道に接し、その内容について情報収集を行いました。現段階では、計画の詳細を把握するには至っておりませんが、原爆開発研究の現場であるニューメキシコ州ロスアラモス、ワシントン州ハンフォード、テネシー州オークリッジの3か所を「マンハッタン計画」を記念する国立歴史公園に指定する計画については大変憂慮しています。

 ご存じのとおり、1945年8月6日と9日、原子爆弾から放たれた数千度もの熱線と爆風、膨大な量の放射線により、広島も長崎も街は廃墟と化し、その年の暮れまでに、20万人以上の市民が亡くなりました。被爆から66年目を迎える今日においても、多くの被爆者が放射線の後障害で苦しんでいます。
 このような悲惨な体験を世界の誰にも二度と体験させてはならないと、私たち被爆地の市民は、核兵器のもたらす惨状を伝え、一刻も早い「核兵器のない世界」の実現を訴えてきました。広島・長崎にもたらした被爆の実相を理解することなく、核兵器廃絶を求める世界の多くの人々の願いに背くものであれば、将来の世代に誤ったメッセージを残すことになりかねないと危惧するものです。

 2009年4月、貴国のバラク・オバマ大統領は、チェコのプラハで「核兵器を使用したことがある唯一の核兵器保有国として、米国には行動する道義的な責任があります。」「米国が核兵器のない世界の平和と安全を追求する決意であることを、信念を持って明言いたします。」と演説されました。このことばに私たち被爆地市民は心から共感し、貴国の今後の核兵器廃絶政策に対し大きな希望を抱いています。

 しかしながら、世界にはまだ20000発以上の核兵器が存在しています。それは、世界中の多くの人々が、核兵器の本当の恐ろしさを理解していないからではないでしょうか。
ネバダ州ラスベガスの核実験博物館には、核実験の成功を示す数多くの展示があるのに比し、核兵器が実際に使用された広島・長崎の被爆の実相や被爆者の苦しみ、悲しみなどについては、ほとんど紹介されていません。

 貴国には、改めて大統領自身が目指す「核兵器なき世界」の実現に向け、被爆者が人類の一員として経験した事実を深く理解したうえで、同公園の指定をはじめ、核兵器に関する責任ある行動をとっていただきますよう、また核実験博物館の展示についても、核兵器を正当化するのではなく、広島・長崎の被爆の実相をしっかりと踏まえていただくよう強く求めます。